ステロイドの使用が怖いと思っている人や、ステロイドが使いたくない人に処方される事が多い薬に「プロトピック軟膏」(タクロリムス)があると思います。
私も実際使っていて、使用歴はもう10年近いと思います。
1999年に登場してから21年になるこの薬について、今回あらためて取り上げました。
2021年10月現在の プロトピック(タクロリムス)情報
マラセチアについて調べてたら、タクロリムス(プロトピック)がマラセチアの発育を抑制するって載ってた。(抗真菌薬には劣るものの)
— こめ デュピクセント1年4ヶ月目 (@Kome_dupixent) September 28, 2021
Zoom会での先輩デュピラーさんの 「赤みにはプロトピック」が頭の中でこだまする。https://t.co/MmZ7InIsuq
※文中のMICは最小発育阻止濃度 pic.twitter.com/N950ihqcPp
添付文章の中に注目した
タクロリムスは抗真菌作用以外にも、マラセチアアレルゲン遺伝子発現を抑制させるなどユニークは作用を示す
- 抗真菌作用
- マラセチアアレルゲン遺伝子発現の抑制
古い薬だけど新しい発見もあり、古い薬だからこそ、副作用の対応や使い方の実績もあり、安心も出きる。お値段も安いし、どこの病院でも手に入る。今でも十分に使える薬だと思います。
アトピーにとってプロトピック軟膏はどんなふうに効くのか
この薬が登場する場では、ステロイド軟膏はアトピー性皮膚炎の「魔法の薬」とされていました。しかし、その魔法の「魔」の部分が大きく、このプロトピックが開発されたとも言われています。
ステロイド軟膏にある副作用で大きいのが「皮膚の萎縮」と「段々効かなくなる」という症状があり、私も悩みました。プロトピックは、そのような部分をカバーするための薬です。
ステロイドと違い、薬の粒(分子量)が大きいので、正常な皮膚からは吸収されません。つまり、無駄に体内に入らないようだ。
とは言え、いくつかの注意点があるので、アトピー歴40年超えるライジンが、1つずつ解説していきます。
特徴
プロトピック軟膏(タクロリムス→成分の名前)はアトピー性皮膚炎の痒みや炎症を抑える薬で、免疫抑制剤になります。
過剰に働いてしまった免疫を抑える事で、炎症や痒みを和らげる方法は、他のアレルギー治療やアトピー治療も同じになります。
この薬の最大の特徴は、ステロイド軟膏の長期使用で見られる「皮膚萎縮」は確認されていない事です。(アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2018より)
実際私も、ステロイド軟膏により皮膚が薄く、血管が浮き出てしまったような場所(顔、特にオデコ)に使いましたが、プロトピック軟膏を塗ると赤みが取れて、皮膚が薄くなった部分も改善されていきました。
使用感は、ステロイド軟膏と変わりません。白色ワセリン系をベースにしていいます。
プロトピックは、アトピー以外の病気にも使われることがり、内服や注射もありますが、そのほとんどはアトピー以外への処方です。
プロトピック(タクロリムス)軟膏は、いくつものメーカーが作っていますが、大きな違いはありません。
ステロイドのランクで言うと「ストロング」や「マイルド」と同等のレベルになります。
小児用に、成分を調整したものも出ているので、お子さんがアトピーの人にも使えるようですね。
禁止な人
残念ながら、妊婦・産婦・授乳婦・乳児には使用できません。
プロトピック軟膏は、通常の大人用は16歳以上。小児用は成分の薄いもので、2~15歳用がありますが、2歳未満の小児には使えない事になっています。
使い方・禁止場所
この薬の使用最大量は、1日に1・2回。1回あたりの間隔は12じ時間。
1回あたりの塗布量は5gまでとあります。5gは、チューブ1本分です。なので、1日最大2本までです。
顔やまぶたを含む、全身どの部分にも使えます。
1日2本って、塗ってみるとわかりますが、相当塗った感あります。全身しっかり塗れる量です。
症状の程度にもより変わりますが、注意点としては、使ってはいけない場所がある事です。
「びらん」と呼ばれる、ジュクジュクした場所。また潰瘍のように、大きく皮膚が痛んでいる場所も良くありません。
副作用の所でお話しますが、とても痛いのです。そのような場所には塗ってはいけません。
塗り方
①プロアクティブ療法
②リアクティブ療法
皮膚科学会のガイドラインによると、基本的には①「プロアクティブ療法」になっています。
プロアクティブ療法に関しては、私はコレクチム軟膏の動画で、塗り方の解説をしているので「プロアクティブ療法」の塗り方を知らない人は、参照してください。
アトピーが出ている場所が狭いとか、部分的に塗りたい場合は②「リアクティブ療法」という 少ない範囲に適量 の塗布になると思います。
その場合、うすく伸ばして とか、 少量をすり込んで とかする人がいますが、結果的に薬の効果が弱くなり、使用期間をムダに長くするので、注意してください。
リアクティブな使い方であっても、炎症が出ている部分を、しっかりカバーできるように塗る。この方が、薬がちゃんと効き、結果的に使用期間も減ります。
出来れば薬は使いたくない・・・その気持ち、わかります。しかし私は、使うべき時は使った方が良いと思っています。そこで重要なのが「使用期間」です。
使用期間
プロアクティブであってもリアクティブであっても言える事ですが、見た目の症状が引いたら、皆さん止めてしまうケースが多い。
薬をあまり使いたくない気持ちはよく分かります。しかし、火事の後、火が消えていても消防士はずっと水をかけ続けるのは「くすぶっている炎から、また火が出ないように」の為なのです。
アトピーの肌も同じことです。使う時は、ちゃんと使う。ではいつまでという線引きが難しいのですが、プロアクティブ療法の話を用いるなら
1週間は、しっかり毎日塗る。症状によっては「朝と晩」。7日間です。
その後、1日置きを、1週間。その後2日置きを1週間。 3日置き・・・
トータル、一か月くらいと言われています。もちろん、塗っている間にも、追加症状が出てくる可能性もありますし、体調の波もあると思います。
診察で処方される薬の量的には、たぶん1週間分とかが多いと思うので、その都度、身体の変化をみて、その塗る頻度の医者に聞いてみてください。
それが一番、確実です。
他の薬との併用
ステロイド軟膏からの乗り換え、切り替えで使う場合が多いのですが、併用も可能です。
私は、塗る場所を使い分けています。皮膚が薄くなると嫌な「顔」は、ステロイドよりもプロトピックを使っています。
私のTwitter仲間にも、医師から全身塗布を言われている人もいます。
飲み薬や注射薬との併用も、実質あると思いますが、一部で他の軟膏と一緒に使う事を想定していないものもあります。
「コレクチム軟膏」です。コレクチム軟膏は、登場が2020年の6月。まだ出たばかりの軟膏治療薬なのですが、コレクチム軟膏と合わせて使う事を想定していません。
想定していないとは、ある意味曖昧で「いいのか?わるいのか?」よくわからないのですが、意味あい的には「同一箇所に、一緒に塗らない」というのであればOKだと、私は医者から言われています。
また、免疫抑制剤である「シクロスポリン」という内服を使っている人は、併用禁止のようです。処方の前に医師から確認があると思います。
副作用について
プロトピックは人によってヒリヒリしたり熱感を持つ方もいるので、始めは少し使って様子見た方が良いと思います。悪い薬ではありませんが、毎日慢性的に使うと、止める時に顔が赤く火照って”リバウンド”の用な症状がありますが、全身には出ず、塗布していたところだけが悪化するようです。
— 国際医療顧問専門家•Kohei•アトピー•癌•体外受精IVF (@KoheiPdx) July 25, 2020
副作用の部分は、患者にとって大きく影響します。
刺激感
私も使用して一番最初に思った事が「痛い」でした。しかしこれは、薬を使用する患部の状態が、塗る条件に合っていない場合もあります。
ガサガサ・ざらざらしているような部分に塗ると、「ヒリヒリ・チクチク」とした痛みが走ります。
灼熱感・ほてり感
肌の荒れ用によって、その大きさが変わります。浸出液が出ているような「びらん」の場所に塗った時には、もう火が出るように痛みますので、注意が必要です。
どんな皮膚の具合には塗ってはダメか(写真で見る)↓
皮膚感染
プロトピック軟膏(タクロリムス)は、免疫抑制であるため、塗った場所に悪い菌がいた場合など、患部に感染症を起こす場合があります。
通常皮膚は、常在菌・日よりみ菌・悪玉菌が居て、皮膚をコントロールしていますが、この「免疫抑制剤」によって、バランスが崩れる事で、悪玉菌の勢いが強くなる事があるからです。
この場合、無駄に広げてしまうと長引きますので、「抗ウィルス剤・抗生物質」などの処方がされます。すぐに対処すれば2・3日で治ります。
プロトピックを塗った場所が、アトピーとは別の様子になった場合、早めに診察受けてください。何事も早い方が、苦痛が短く、結果的にお金も安く済みます。
その他
タクロリムスは、登場した1999年から2003年の間で「発がんリスク」の報道がありました。この記事を書いているのは2020年です。21年の経過がありました。
登場後に言われていた問題に関して、事実であれば行政指導や改善、薬害訴訟などの問題があると思いますが、全くありません。
よって、この薬の発がんに関しては問題ないと思われます。日本皮膚科学会からの説明が出ていますので、気になる方はこちらをどうぞ。
日本皮膚科学会: リンク「タクロリムス軟膏(プロトピック軟膏)使用中およびこれから使用される患者さんへ」
価格
この薬は、後発品(ジェネリック)もあります。ジェネリックだとイマイチ効きが悪いと感じる人もいますが、価格に関しての負担はジェネリックは半値くらいになります。
1gあたり100円前後
大概の場合は「チューブ」で処方してもらうのですが1本5gのものだと思いますので、単価としては500円位です。
ジェネリックであれは、その半額。薬剤の成分が弱くしてある「小児用」も同じくらいの価格です。(小児用はジェネリック、無いかも)
保険診療の場合、負担金額は変わりますので、薬局で聞いてみてください。
医者への掛かり方
この薬は、近所の皮膚科で言えば、普通に処方して貰える薬です。ただし、患者の症状や状態(妊娠しているなど)によって、使用に注意が必要です。
ステロイドの治療でうまくいかない、使う場所によって使い分けたいなど、自分の希望もふくめ医者に伝えれば良いです。
今使っている塗り薬の状況も、合わせて伝える事をお忘れなく!
また「使用期間」の所でも書きましたが、一回の処方してもらう薬の量は、たぶん1週間分とかです。
なぜ一週間分かには、意味があって、その量をその期間で使う事を想定しています。よく「段々薬が残っていく。前の薬が残っている」というのがあります。
もちろん、少し余分に出しているのはありますが、基本的には診察した時に、その症状に必要な量しか出されないのです。
身体が治っていく加減で、処方される量は減っていくはず。
なので、服を全部脱いで見せるとは言いまえんが、症状に合わせた「量とか頻度」に関して、絶対に聞いてくださいね。ダラダラ使う事にならないように。
この状態だと「2日置き、3日置きで良いですよ!」と言われるようになれば、プロから見て良くなってきているという事です。
患者側として
大事な事は、薬に頼らない治療をする事。補助的な目的や、一番悪化している期間をムダに長びかせないために、薬は使用します。
人間は面倒な事を避けるため、手軽い効果が出るものに頼り勝ち。薬もそうです。しかし、そこに頼りすぎると制御できなくなります。
正しい使い方を知り、自分の生活の中でどのように使うか決める。そして、症状を観察しながら、使い方に注意する。
忘れてはいけない、大事な事です。
読んでいただき、ありがとうございました。(ライジン)
コメント
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